トップページ  » 読書ブログ  » 烏賀陽弘道さんの新刊「世界標準の戦争と平和」は無知の知を実感出来る必読の書。

2019.10.23 WED - 読書ブログ

烏賀陽弘道さんの新刊「世界標準の戦争と平和」は無知の知を実感出来る必読の書。



烏賀陽弘道さんの新刊「世界標準の戦争と平和」は無知の知を実感出来る必読の書。

世界の軍事情報で信頼できる本と言われているもので「ミリタリーバランス」という本がある。防衛省のレポートにも引用される本だ。残念ながら日本語版は現在存在しない。ただし、過去には存在していた。

1995〜1996年度版までは日本語も出版されていた。Amazonでミリタリーバランスを検索してみると一番古い日本語版ミリタリーバランスは1979〜1980年版のだ。それから16年ほど出版されたようだが1996年以降は日本語版が存在しない。このことは烏賀陽さんの新刊の中でも触れられている。

以下引用

困ったことに、『ミリタリー・バランス』は1995〜1996年版を最後に日本語版の出版が途絶えています。しかも、最新の2019年版はフルバージョンだと1冊7万円もします。個人がおいそれと買える値段ではない。しかも、今回東京の図書館を探してみたのですが、ほとんど置いていないことがわかりました。つまり、日本の国内では、世界のスタンダードになっているデータブックすらほとんど手に入らない。しかも日本人の英語リテラシーの低さを考えると、英語で『ミリタリー・バランス』を参照できる人はごく少数と考えるのが自然です。

以上引用終わり

烏賀陽弘道.世界標準の戦争と平和初心者のための国際安全保障入門より

ミリタリーバランスは世界で信頼されている軍事レポートだが、我々日本人はこのレポートを日本語で手軽に読むことが出来ない。そうすると多くの日本人は信頼できるこのレポートに触れる事無く、独自の考えで安全保障を語ることになる。独自の考えというと聞こえはいいが、信頼できる情報が無い好き勝手な意見に過ぎない。もっと言えば空想に過ぎない。

世界標準の情報を共有していないので、当然日本人が語る安全保障はどんどんズレていくことになる。一部の信頼できる専門家は当然これを英語で読んでいるが、一般人が読むことはない。

世界標準の安全保障を語ろうとしても多くの日本人は世界標準で共有されているレポートを共有していない。それどころか共有できてないと認識すら出来てない日本人の方が大多数である。

そういう人達が好き勝手に「日本の安全保障は〜」とかネットで言っている。そしてそれが「無茶苦茶な空想」になっていることすら気付かない。

ミリタリーバランスは流石に現在でも防衛省のレポートには引用されている。専門家はきちんと読んでいるようだ。Googleで「ミリタリーバランス  go.jp」で検索すると約 3,380,000 件ヒットする。官僚が作成しているレポートには大量に参照されているのである。



専門家がちゃんと読んでいるならいいじゃないか、と思うかもしれないがそれはかなり私は危険な考えだ。

仮に専門家がしっかり読んでいたとしても、政治家はどうだろうか。日本人の大多数が世界標準からかけ離れた意見を言っていてそれが世論になったらどうだろうか。

政治家は専門家と同レベルの安全保障政策を理解し、国民に対して「国民の皆さんは知らないと思うがそれは違うのだ」と言うだろうか。それとも選挙のために世論に迎合するだろうか。私は後者だと思う。

次に、マスコミが番組を作成するときに世界の安全保障の標準から考えたらかけ離れた番組を作るのは何故だろう。それは世界標準ではおかしいという事をマスコミがきちんと言うよりも、世論に迎合してめちゃくちゃな番組を作る方が視聴率がとれるからだ。(なにが世界標準からみておかしいのか、についてここに書くと本を買う意義が薄れるので是非買って読んでみて欲しい)

世論に迎合する政治家とマスコミに流されて、日本が世界から見てめちゃくちゃな安全保障政策をとってしまったら、私は考えるのも恐ろしい。

とすると私達は一人一人が安全保障についてきちんと理解する必要がある。そしておかしな報道はおかしいと思い、政治家がおかしな事を言っているとわかればそれをおかしいと判断できる知識を仕入れることが必要になる。

現状ではそれを実現しようとすると個人でミリタリーバランスを読み、各種専門書を読む必要がある。今回の本で参考図書とされている本や、マハンの海上権力史論は私も読んだがかなり大変な読書になる。なかなか一般人が負担できる物ではない。

烏賀陽弘道さんの今回の新刊は正にそういう一般人にとって最低限の知識をわかりやすく書いてくれた最高の本だ。

日本の安全保障を考えた時、日本を世界の中で理解する必要がある。世界の中で共有されているレポートを読み、わかりやすく書いてくれた烏賀陽さんの今回の本は何度も言うが最高である。

安全保障に興味が無い人も、この本は自分の中にある「無知の知」を実感出来る知的訓練としても素晴らしい本になる。是非オススメしたい。

世界標準の戦争と平和 烏賀陽弘道
https://www.amazon.co.jp/dp/4594082335/

そしてそんな烏賀陽弘道さんの新刊イベントが八重洲ブックセンター本店で開催される。是非来てほしい。

八重洲ブックセンターのイベントはこちら
https://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/16948/

八重洲ブックセンターイベントの後の烏賀陽さんを祝う会はこちら

烏賀陽さん新刊お祝い会を開催します 10月25日21時過ぎより



ここからは余談。日本のGDPの世界シェアが最高になったのが1995年。この時日本のGDPの世界シェアは17.6%もあった。そして今は6%程度。3分の1も日本の経済的な影響力は世界で減ってしまった。そしてミリタリーバランスの日本語版が翻訳されなくなったのは1995〜1996年度版から。経済が絶頂を迎え、最早敵無しとおごってしまったのだろうか?経済は衰退し、世界標準の安全保障の情報も見ずに「日本サイコー」というのはとても恐ろしい。

著者略歴烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)

1963年、京都市生まれ。京都大学経済学部卒。1986年、朝日新聞社に入社し名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌『アエラ』編集部員。1992年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。1998〜1999年に『アエラ』記者としてニューヨークに駐在。

2003年に退社してフリーランスの報道記者・写真家として活動している。これまでに20冊の著作がある。主な著書に『フェイクニュースの見分け方』『報道の脳死』(新潮新書)『原発難民』(PHP新書)『敷金・職質・保証人』(ワニブックスPLUS新書)『「Jポップ」は死んだ』(扶桑社新書)などがある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

清水 有高

清水 有高Yukou Shimizu

ビ・ハイア株式会社 代表取締役

一月万冊 清水有高(しみずゆうこう)滋賀県出身。元不登校児、母子家庭育ち。ビ・ハイア株式会社代表取締役。滋賀県立大学人間文化学部卒業。ベンチャー役員、上場企業役員などを経験しコーチ、投資家、経営者として活動中。東京大学を始め各種大学でも講演多数。コーチングと読書を経営に活かし営業利益1億円以上、自己資本比率70%の会社を経営。8年間でスタッフ1人あたりの営業利益を100倍以上にする。

新着記事

人気ランキング